カギがあなたを守る

カギがなければ大変です!

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従来の日本人論によると、本来日本人はヨーロッパとは違い、近代個人主義が十分に育たなかった民族とされています。
中根千枝氏が指摘したように、タテ社会の強い日本では、ヨーロッパのようなヨコのつながりが不十分であり、集団的な思考はできても、個人としての意識が育たなかったという訳です。
こうした理論の正否はともかく、私たち日本人には、そうした面があることは否めないと思います。
よい例がオレオレ詐欺です。
被害者は大部分が高齢者なのですが、一般人から見れば、どうして騙されてしまうのか首を傾げるのではないでしょうか。
犯人の大半は被害者の孫を演じるということです。
被害者の一番可愛がっているはずの孫をダシに使うことにより、心理的弱点を突くという方法です。
次に警察官や刑事、弁護士など世間一般でかなり高い信頼を寄せられている人の権威を借りることです。
最近では警察官でも犯罪を犯す人もいるので、こうした権威は以前より失墜してしまったと言えないこともありません。
しかし、今の高齢者が若かった時代は現代とは違っていました。
村や町のお巡りさんは、共同体を守ってくれる重要な存在でした。
住民とお巡りさんは互いに信頼関係を築くことにより、スムーズな生活を営んでいたのです。
言い換えれば、互いを信じない方が支障が出たのです。
欧米の映画やドラマを見ると、カギを使うシーンがよく出てきます。
日本の時代劇では蔵の錠前破り意外は、個人が家庭でカギを使うシーンはほとんどないのではないでしょうか。
外部の人は別として、家庭の中では互いに信頼し合うのが普通だからです。
欧米では家庭でも、小さい時から個人としての意識を強める教育をするそうです。
家族であっても、基本は個人の集まりなのです。
こうした社会は、互いの暗黙の信頼関係を薄くしてしまします。
カギが必要になるのは当然のことでしょう。
最近の暗証番号も同じです。
これは一種の心のカギであって、例え家族であっても、各自が保持するという前提で作られているものだからです。
もちろん欧米でも、相当曖昧な人間関係も現実にはあるでしょう。
しかしオレオレ詐欺は、こうした日本人の習慣を巧みに突いた犯罪であると言えるでしょう。
カギ一つを取っても、その地域の歴史や習慣また個人主義の度合いをうかがい知ることができるのです。